「まーくん、大変なことになったねぇ…」
「ああ、嫌な役目を負わされたな」
目の前には女子たちに囲まれた紺野昴。
声をかける隙さえありゃしない。
行かせまいとしているのか…
「あ、それじゃさ。部長に言ってこようかな?
転入生の案内で部活行けないって」
「ああ、そうだな。頼む」
はいはーいと教室を出ようとすると
「どこ行くの?!」
と後ろから手をつかまれた。
ん…?
「俺の案内は?!」
いやいや…甘えたか!
「部長に遅れるって伝えに行くの!」
離してと言わんばかりに手を上下に振っても全く離そうとしない。
まず、周りの女子はどうした。
「りーんねぇちゃーん!終わった?」
離す、離さないの攻防戦。
するとそこにかえで君も来た。
「何してんの!あんた誰だ!鈴姉ちゃんが嫌がってるだろ!」
私がいくら振っても取れなかった紺野君の指を、かえで君はいとも簡単に外した。
男らしくなったなぁ…と感心しつつ、かえで君の目は警戒心丸出し。
対する紺野君の目はこれまで通りのへらっとした笑顔で。
バトルが見える…バチバチしてる…
「か、かえで君!ありがとう、大丈夫だよ!」
慌ててなだめる。
この人が転入生ということ。
案内しなければならないこと。
今から部室に行って部長に遅れると伝えること。
この3つを言うと彼の目から怒りがだんだんと消えていき、警戒心もさっきよりはマシになった。
そしていざ部室に向かおうとすると紺野君もついていくと言い出し、かえで君は紺野君が行くならと言い出し…
まーくんは…まぁ、皆が行くならということで、結局みんなで部室に向かうことになった。

