恋はたい焼き戦争



そして、1週間経った今日も勇輝君は正門のところにいた。





「…勇輝君…」

「…なぁ、鈴に何の用なわけ」





昴はずっと彼のことをよく思っていないようだった。


勇輝君に話しかける声も尖っていて、喧嘩を売ってるようなもので。


だから、勇輝君も急に苛立ち始めたのかもしれない。





「…用がなきゃ来ちゃダメなんですかねぇ」

「…はぁ?」

「鈴はこんな柄の悪い男と一緒にいるのか」





彼のそんな一言に昴は胸ぐらを掴みかかる勢いで迫って行った。


私はそんな彼との間に割って入る。





「ご、ごめん!」

「…何で鈴が謝んだよ」

「…はぁ」





勇輝君はそんな私たちの光景を見ても、どうでもいいような他人事のような顔をしていた。





「鈴がこんなやつらといるなんて思ってもみなかったよ」

「勇輝君…!」

「ここにいるの全員鈴と同じ演劇部?」

「そうだけど…」

「演劇なんて何の役にも立たない無能なものやって、本当にお暇なんですね?」





一瞬でその場が凍りつく。


それもそう。私たちはみんな演劇が好きで、大好きでやってるんだから。





「…演劇はお嫌いなんですね」





それでも、そんな風に言われて黙ってる部長じゃなかった。





「あんなの時間の無駄以外、何物でもないでしょう」

「…勇輝君!」

「そんなものに時間かけて労力使って、馬鹿らしい」

「…黙って聞いてれば好き勝手に」

「部長、すみません…!」





今まで演劇を馬鹿にする人なんていなかった。

でも今、目の前に現れてしまった。

大の演劇好きの部長の前に。


この先の展開が怖くて、何とか部長をなだめようと言葉をかけても届かない。





「いいですよねぇ。僕なんて貴方たち一般庶民と違って忙しいので、時間をどぶに捨てるようなそんな真似できませんよ」

「勇輝君!
…もう帰って」

「…はぁ。
鈴も付き合う人間は考えた方がいいよ」





そう吐き捨てて、渋々彼は帰って行った。