そっと頬を撫でられて、一瞬だけ唇が重なった。

「でも、もうさようなら、だ」

ゆっくり膝からおろすと、私をひとりで立たせる。
私も先生から手を離した。

「はい、さようなら、です」

「じゃあ、な」

「じゃあ」

先生に背を向け、部屋を出る。

あとから杉本先生はやっぱり、私のことで責任をとって辞めたんだと知った。
理事長の誠おじさんの権限で、私のためにいろいろ便宜を図ってたし、辞めるという杉本先生を止めたけれど、けじめだって辞めたんだとお兄ちゃんが教えてくれた。