家の前で車を降りる。
先生は俺がいない方がいいだろ、ってそのまま帰って行った。

駐車場にはお兄ちゃんの車があるだけ。

玄関の前で深呼吸。

ドアに手をかけて、そういや今朝も教室の前で同じことしてたなって、ちょっとおかしくなった。

「た、ただいま……」

鍵はかかってなかった。
おそるおそるドアを開けたものの、中からはなにも聞こえない。

「その……おじゃまします……?」

「ぷっ」

靴を脱いで上がると、どこからか吹き出す音。
そーっと見渡すと、お兄ちゃんが隠れてた。
笑いをこらえてるのか、小刻みに身体が震えてる。

「自分の家に帰ってくるのに、おじゃましますってなんだよ」

「だ、だって」

とうとう、お兄ちゃんは笑い転げだした。