それからお兄ちゃんはばたばたしてた。
そりゃそうだろう、犯人が分かったんだから。

すぐに椛島先生は警察に連行され、自白の後、逮捕された。
近くで大病院を経営している先生の父親も、手を貸したとして。

ほかの被害者もたくさん判明して、世間は騒然となった。


「萌花」

「えっ、……うん」

名前を呼ばれて顔を上げると、お兄ちゃんが苦笑いしてた。

——誠おじさんの家。
明石くんに借りた本を読んでたつもりだけど、手は完全に止まってた。

お兄ちゃんに会うのはひさしぶり。

家にいると、マスコミや野次馬が常に張り付いてるから、最初はおじいちゃんの家に私だけ避難した。
でも、どこからバレるのか、すぐにおじいちゃんの家にも押し掛けてくるようになって。
いまは誠おじさんの家にいる。

「薬。預かってきた」

「ありがとう、お兄ちゃん」