ただ、黙って涙をこぼす私を強く抱き締めると、お兄ちゃんは髪を撫でてくれた。

「……今日はもう、帰ろうな」

「……うん」

涙が落ち着くと、お兄ちゃんに抱き抱えられた。
素直に首に腕を回し、顔をうずめると安心できて、今度は穏やかに意識を失った。

 
目が覚めたら自分の部屋の、ベッドの上だった。
かたかたと音がする方を見ると、お兄ちゃんがテーブルでパソコンに向かってた。

「気分、どうだ?」

「……平気」

……なにが、あったんだっけ?
始業式、新しくきた先生の紹介で……。
なにか、思い出しそうなんだけど。

鼓動が、早くなっていく。
指先が、冷たい。
息が……。