夏祭りの日。
お母さんに浴衣を着せてもらった。

紺地に、朝顔柄。

髪も本を見ながらそれなりに結ってみる。
仕上げにリップを塗ったらお兄ちゃんに拭われた。

「夏祭りは中止」

「なんで!?」

せっかく今年は行けるって楽しみにしてたのに、いきなり中止なんてないよ。

「そんな格好して。
攫ってくださいって云ってるようなもんだろ」

「なんでいちいちそうやって文句付けるの!?」

怒ったら、みるみるうちにお兄ちゃんの顔が悲しそうに歪んでいった。

……失敗。
云い過ぎた。

「……ごめん。
お兄ちゃんが心配なのはわかるけど。
もう高校生なんだよ?
ちょっとは信頼して欲しいな」