楽しそうにくすくすと笑い声をもらすユリちゃんの隣で、ちらちらと辺りを確認する。
周りに学校の生徒はいない。
ていうか、人もいない。
よし。
「ね」
「…なに?」
「もう周りにうちの生徒いないよ」
照れ屋の彼女へ少しだけ助け舟。
ふたりきりの時だけの約束を、僕から彼女へ投げかけた。
それでも口を閉じたままの彼女に追い打ち。
「ね。ユリちゃん」
顔を隠す髪を耳にかけてあげながら、そのまま耳をつまんでなでる。
「バカ。やめてよ」
「はは。ごめんごめん」
「…」
「ん?どしたの?」
「バカ…りゅうじくん」
“ふたりきりの時は名前で呼ぶ”
果たされた約束は、バカと言われつつも僕の表情筋をゆるゆるにするほどの威力があった。

