するどくてやわらかい



乱れた髪を指で直しながらそう言うと、ユリちゃんは恥ずかしそうに視線をそらしながら僕の指を避ける。



「でも、ごめん」


「はいはい」


軽く返事をする僕に少しだけむっとした表情を見せながら、すたすたと駅の方向へ歩き出すユリちゃん。


そんなユリちゃんについていきながら、僕もまた駅までの道のりを歩く。


「ねえ、ユリちゃん」

「なに?」


まっすぐ前を見て、僕の問いかけに答えるユリちゃん。


ちらりと僕の方を向いたのを確認して、にっこりとユリちゃんに笑いかける。



「ユリちゃんさ、僕と初めてあった時のことおぼえてる?」


「はじめて?」


「ほら、電車で。ボタンに髪絡まっちゃった時のこと」


「…あぁ、うん。覚えてる」


ユリちゃんの視線はすでに僕にはなくて、身長差のせいで表情もはっきりとは確認できないけど

少しだけ緩んだ口元だけは確認できた。


「さっきね、その時のこと思い出してたんだ」

「懐かしいね。あすかくんのボタンちぎらせちゃったんだよね」


「そうそう。あのときさ、ユリちゃん僕のこと知ってたんだね。存在も知られてないと思ってたからびっくりしたよ」


落ちてる葉っぱをぱりぱりと踏みながら、ポケットに入れていた手を外に出した。

日の暮れたこの時間、少しだけ気温も下がってきてる。


「…ずっと前から知ってたから」


ぽそりとつぶやいたゆりちゃんの声が風でうまく聞き取れない。



「ん?なんて?」


「なにも言ってないよ」


絶対嘘だよ…