うお近っ、じゃなくて。
差し出してきた手を見ると、その手のひらにはコロンと金色のボタン。
ついさっき僕が自分でちぎってポケットに入れたものだ。
浅く腰掛けた椅子に距離を取るため深く座り直しながら、指で自分の頬をかいた。
「ボタン、は、それだけだけど…」
そう伝えて高梨さんを見ると、どこか困ったような顔をしている気がした。
「えと、」
「裏ボタンがないと…」
その言葉を聞いて、僕はしまったと頭を抱えたくなった。
学ランは表に見えてる金色のボタンの裏に小さなボタンと一緒に縫い付けられてる。
自分でボタンなんてつけたことないけど、確か裏の小さなボタンがないとつけられなかったはずだ。
ボタンを引きちぎったあの時、僕はそんなものの存在のことはすっかり忘れていて金色の表のボタンだけを回収したのだ。
裏ボタンは今頃さっきまで乗ってた電車に落ちてる。

