伊織side



「お‥大きい‥ですね‥。」



私はある建物を前に言葉を失っていた。



「当たり前でしょう!なんと言ったって柊人のご両親は会社の社長なんだから!‥かと言う私も実はビビってるけど!」




ビビっているのかい!!



そう咲和先輩にツッコミたい気分だったが、それどころではないのでつっこまないことにした。



そう、私たち文芸部員がいるのは柊人先輩の家の門の前!


柊人先輩の家はとても広く正面には噴水が見えた。


あれから大和先輩が顧問の最上先生と話をし、柊人先輩の家での合宿が決まった。


最上先生は忙しくていけないとのことだった。



「‥よ‥よし、行こうか!」


大和先輩も緊張しているのか、少し声がうわずっていた。



ピンポーン



大和先輩が門の前にあるインターホンを押すと上品な音が鳴り響いた。



すると、それまで閉じられていた門が開かれた。


私たちはますます、言葉を失ってしまう。



戸惑いながらも門をくぐり真正面にある玄関に歩いていくと、柊人先輩が出てきた。


「ようこそ。遠いところから、わざわざありがとな。狭いところだけどゆっくりしていってくれ。」



これを狭いという柊人先輩が1番、恐ろしい‥。



「お‥お邪魔します‥」



私はおそるおそる中に入る。


すると‥



「‥みんな、固くなりすぎだよ。もっとリラックスしなよ。うち、誰もいないからさ。」


見かねたように柊人先輩が言った。


「いやいや、この広さでさすがにリラックスは出来ないよ!むしろ、広すぎて落ちつかない!」


咲和先輩が我慢ができないといった感じに思ったことを言ってしまった。



「咲和、落ち着けって。いつものお前らしくない。その内、なれるよ。」


「その内ていつよ!?」


いつもは落ち着いている咲和先輩が完全におかしくなってる‥。


恐るべし向井家‥。


もはや、ここまで来ると夫婦漫才にしか聞こえない。


「柊人先輩、本当にお邪魔していいんですか?しかも、2日間も‥。」


「大丈夫だって。親は外国に行っていないし、許可もとってある。好きに使ってくれってさ。」


「なら‥いいんですけど‥。」


「‥ったく、咲和や彩月に伊織、それに大和。みんな心配しすぎなんだよ。もう、のびのびとやってくれ。以上!」


柊人先輩が笑顔で言った。


その笑顔に安心し、みんなが通常のテンションになった。