伊織side



保健室のベッドの上には、さっきよりは顔色の良くなった彩月が寝ていた。


だけど、まだ具合は悪そうだ。



すると廊下がにわかに騒がしくなった。


廊下に出てみると文芸部の部員、全員が集合していた。


「伊織‥彩月は?」


走ってきたのか大和先輩が息を切らせながら聞いた。


「大丈夫ですよ。貧血で倒れただけみたいですから。ほら今日、献血が来てるじゃないですか?それですよ。今、血を戻してもらって休んでいますから。」



そう言って私は保健室の扉を開いた。


大和先輩は保健室に入ろうとした。‥が、





「ちょっと待った大和。」



ずっと黙っていた柊人先輩が口を開き、開いていたドアを閉めた。


「ど‥どうしたんですか?柊人先輩?」



この状況に大和先輩は驚いていた。かくいう私も少し柊人先輩の行動に驚いていた。


そして、言いにくそうに柊人先輩が口を開いた。


「いや‥あのさ‥俺の勘違いならいいんだけど、大和‥部活のこと以外で彩月と何かあった?」



意外な質問だった。



「いや、特にそんなことはなかったですけど‥。」


「そっか‥。なら、いいんだ。邪魔して悪かったな。」



そう言って再びドアを開け大和先輩は中に入っていった。



大和先輩が行ってしまうと柊人先輩は大きな息を吐き廊下にある椅子に座った。


「柊人。何かあったの?柊人がそんなこと聞くなんて珍しいね。」


ずっと黙っていた咲和先輩が口を開いた。



「‥実はさ、今日廊下で彩月と会ったんだよね。なんか、傷ついた顔してたから何かあったのかと思って。気になってたんだ。」



「へぇー彩月がねー。彩月でも傷つくことてあるんだね。タフな子だから大丈夫だと思ってた。それで?他に気づいたことあったの?」


咲和先輩は興味津々で先を促していた。


人の不幸は蜜の味ていうもんね‥


私はそんな咲和先輩を苦笑しながら見ていた。



「大和さ、たまに女の子と親しげに話してるのを見かけるんだ。今年になってから。」


「それはクラスが一緒で、とかではなく?私も男子とは話すよ。彼氏いるけど。」


さりげなく彼氏という言葉を強調する咲和先輩。


これ、他の女子に言ったら嫌われるパターンだ‥。



さっきからずっと私は苦笑してばかりだ。




「俺にはそれ以上の関係に見えるんだけど‥。その子、確か凛ていう名前だったような気がするんだけどな‥。一体、何者なんだ?」



「凛?」


私はその名前に聞き覚えがある気がして口にその名前を出して見た。



どこかで‥




「あっ!!!」




私の大きな声に柊人先輩も咲和先輩もびっくりしたようだった。‥が今はそれどころではない。



「すみません!!ちょっと、気になることがあるので失礼します!また戻って来ますので!」



私は急いで向かった。それは、ある人に会うために‥