伊織side


5月があっという間に過ぎていつの間にか、梅雨の季節である6月になった。



私は授業が始まる前にあるノートとにらめっこをしていた。



うーん。どうしよっかな‥。



私は必死に頭をひねらす。


私が今、悩んでいるもの。それは部活でやっているリレー小説である。


柊人先輩から、回ってきたものなのだが‥。




これは‥悩むよー。



さっきからこの言葉だけで、なかなか書けないでいた。


小説家志望の私が苦戦を強いられているものは、高校野球を題材に繰り広げられる球児とクラスメイトの女子が恋をするという内容だ。



これまた、内容がひどくなりつつある。



多分、咲和先輩の悪ふざけのせいだろうとは思うけどその後の彩月がうまく繋いでいた。



だけどなー。



「い・お・り・ちゃん。何、してるの?」



声に振り向くとそこには凛ちゃんがいた。



「んー、文芸部のリレー小説を考えてるの。これが意外に難しくて。」


「へぇー。ユニークなことしてるんだね文芸部て。」


凛ちゃんは珍しそうにリレー小説を見ながら言った。


「うん。部長がいろいろ考えてくれてさ、すごく楽しいんだー。」


そんなことを話していると‥


「伊織!」


またしても私の名を呼ぶ声が。


その声に振り向くと噂をしていた文芸部部長の大和先輩がやってきた。


大和先輩とは学部が同じなので授業が一緒になることがある。


「今日の部活は文学の話をしようと思ってるからそのつもりで頼むな。」


「はい。わかりました!」


たまに大和先輩は戸惑わないように授業などで会えば事前に教えてくれる。


すると大和先輩は凛ちゃんと同じように机の上にあるリレー小説を見て苦笑した。



「やっぱ、柊人先輩の後てやりづらいよなー。苦労させて悪いな伊織。どう、進んでる?」


「は‥はい。ぼ‥ぼちぼちと‥。」


「その感じは全然、進んでなさそうだな。」


大和先輩は私を見て何か、感じたようだった。


「すみません。早く書いて先輩に渡しますので。」


「いや、焦らなくて大丈夫だよ。小説はスピードよりも質の方が大事だしね。じゃあ、また部活の時に。」


そう言って手をあげて大和先輩は行こうとした。‥が途中で立ち止まり、私の方をもう一度見た。



「それと、凛。あんまり伊織の邪魔をするなよ?」


なぜか大和先輩は凛ちゃんに話しかけた。



「分かってるよ。伊織ちゃんの邪魔なんてしないよ。」


凛ちゃんは笑顔で言った。



「‥なら、いいけど。」



そう言うと大和先輩は席へと行ってしまった。