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大きな旅行かばんを下げて歩く事45分。


まだ目的の場所は見えてきていなかった。


「何が数分なんですか!」


すっかり疲れ果ててしまった美夏が先生に文句を言う。


「本当の事を言ったらお前ら歩かないだろ」


そう言う先生もだいぶ息が上がってきていた。


友香はずっと我慢して黙って歩いてきたけれど、さすがに疲れが出てきていた。


普段こんな山道を歩く事もないので、足が痛い。


「運動靴をはいて来いって言うのはこれの為だったんだね」


友香はふと気が付いてそう呟いた。


「あぁ、そうだね。きっとそうだ」


美夏は何度も頷いてそう言った。


今回の宿泊合宿のしおりを貰った時に、いつものローファーではなく運動靴で来ることと書いてあったのを思い出したのだ。


制服に運動靴の不似合いさに最初はとまどったものの、この山道を歩くのが目的ならそれも理解できた。


そんな中、列の後ろの方からみゆの声がひっきりなしに聞こえてくる。


「足が痛い! もう無理、歩けない!!」


クラスの男子に自分の荷物を持たせているくせに、文句ばかりが口から出て来る。


友香と美夏は顔を見合わせて、苦笑いを浮かべたのだった。