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「あの男が校内にいるのに?」


そう言われて、友香は真っ黒な服を着た男を思い出した。


まだ若く、もしかしたらあたしたちと同年代かもしれないあの男。


確かに、あの男が校内にいる中で安心して眠る事なんてできないかもしれない。


だけど、助けが来るまではここから出ることすらできないんだ。


鍵がかかる教室で身を寄せ合っていた方が安全だと思う。


「友香に八つ当たりしても仕方ないでしょ」


そう言ったのは美夏だった。


美夏も泣いていたが、比較的落ち着いているように見えた。


「このゲームがいつまで続くのか、あたしたちにはわからないんだし……」


美夏はそう言い、膝を立てて座った。


そのまま自分の体を抱きしめるようにして身を縮める。


みんな同じように不安と恐怖でさいなまれているのだ。


そしてそれは残されたHチームも同じだった。


今一番不安で押しつぶされてしまいそうなのは、陸と孝彦の2人だった。


1人は体育館の隅に座り体を震わせている。


さっきから一言も発せず、真っ青なままだ。