「友香は先生に告白しないの?」


美夏に突然そう聞かれ、驚いた友香は顔が真っ赤になって行く。


自分でも止められないようで、両手で頬を包み込んでどうにか隠そうとしている。


「告白なんて、無理だよ。まだ4月だし、先生も担任になったばかりだし」


しどろもどろとそう返事をしているが、相変わらず顔は赤い。


生徒から先生への告白は友香の中で何度も憧れてきたシチュエーションだった。


ただ、それが自分の身に降りかかってくることがあるなんて、思ってもみなかった。


全部少女漫画やドラマの中の話だと思っていた。


「まぁそうだよねぇ。先生に告白なんてできないよね」


美夏は滝の細かなしぶきを浴びながらそう言った。


その言葉に友香はうつむく。


いつか気持ちを伝える事ができれば。


そう思っているけれど、まだ思っているだけでリアリティはなかった。


「でもさ、結構本気な人もいるもんね」


美夏の言葉に友香は視線を移動させた。


さっきから聞こえて来る、不愉快なほど明るい笑い声。


クラスで一番可愛いと人気の中山みゆの声だ。


みゆは自分が可愛いと言う自覚があった上で天然を演じている。


女子生徒なら簡単には騙されないのだけれど、クラスの、否、学年の大半の男子生徒がみゆに騙されている状態だった。