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桜がクラス委員になったのは担任の戸川先生が推薦してくれたからだった。


戸川先生は新人の先生でまだまだ頼りない所があった。


その日も戸川先生は生徒たちに配るプリントを職員室に忘れてきてしまっていた。


そんな時、入口の一番前の席に座っていた桜が呼ばれたのだ。


『一緒に職員室に行ってプリントを運んでくれないか』と。


戸川先生は女子生徒に人気だし、頼まれごとをされても嫌な気分にはならなかった。


桜自身戸川先生のことをいいなと感じていたし、入口側の一番前でよかったとさえ思っていた。


『一緒に思考錯誤しながらクラスを支えてくれないか?』


プリントを抱えて教室へ戻る途中、戸川先生がそう言って来たのだ。


桜は一瞬戸惑った。


できれば簡単な委員会に入ってそこそこ活動をして、評価を貰えばそれでいいと思っていた。


クラスを支えるなんて大きなこと、考えてもいなかった。


『どうしてあたしなんですか?』


『片山は勉強ができるし、みんなからの信頼もある。友達もいて明るいし、きっとみんなついて来てくれると思うんだ』


まだまだ学校に馴れていない時期にそんな事を言われると思っていなかった桜はとても嬉しかった。


なにより、戸川先生に特別扱いされているような気分になって心地が良かったのだ。


それから桜はクラス委員になった。