1人体育館に残された心太朗はその場に立ち尽くしていた。


『好きなら死んでも守れよ』


源の言葉が脳内で何度も再生されていた。


丘の上で横になり、手を取り合って死んでいった妹と叔父さんを思い出す。


それは本当に綺麗な記憶で。


うつくしくてどうしようもなくて……。


そこまで考えた瞬間、丘の上で膝をつき泣きじゃくっている自分の姿が浮かんできた。


え?


なんだ、この映像は?


記憶の奥底にしまいこんでしまった本当の思いが、一気に蘇って来る。


あの丘の上で妹の手を握りしめて泣きじゃくる俺。


保険の授業で習ったばかりの心臓マッサージを繰り返し、何度も心音を確認したけれど、妹の心臓は止まったままだった。


『なんでだよ! なんで一緒に連れて行こうとするんだよ!!』


泣きながら、隣で目を閉じている叔父さんをののしった。


『大人のくせに子供に手ぇだしやがって! 最低野郎が!!』


叔父さんの死体に唾を吐きかけ、その体を思いっきり蹴った。


それでも叔父さんは目を開けなかった。


蹴った拍子に体が少し動いたけれど、微動だにしなかった。