好きな子が泣きながら体育館を出るのを、心太朗は茫然と立ち尽くしたまま見送った。


「心太朗。お前は間違ってるよ」


その声に振り向くと、腹部を押さえてうずくまっている源がいた。


源の横には真子がいる。


目の前の2人の関係と俺と友香の関係はほとんど変わらないはずだった。


なのに、どうして?


どうして友香は泣きながら逃げてしまったんだ?


わからなくて、切ない気持ちが胸に突き上げて来る。


友香を泣かせるつもりなんてなかった。


ただ好きで、ずっと一緒にいたくて。


妹のように好きな相手と死ねればさぞかし幸せだろうと思って……。


それが、間違いだったのか?


「好きな女を殺そうとしてどうするんだよ」


源がようやく立ちあがり、そう言った。


「え……でも……」


妹と叔父さんの死に顔を思い出す。


後悔なんて微塵にも感じられないくらい、穏やかな死に顔だった。