「ここでもチョークで印をつけるんだっけ?」


みゆがそう聞いてくるので、杏珠は小さく頷いた。


「うん。部屋の奥の壁に正の字を――」


そこまで言い、言葉を切った。


今一瞬人の気配を感じた気がする。


杏珠は周囲をライトで照らして確認した。


しかし、そこには誰もいない。


おかしいな……。


会議室へと視線をうつした瞬間、窓から見える教室の中に人影が見えた気がして、杏珠は小さく悲鳴をあげた。


「なになに、どうしたの!?」


メイが慌てて周りを確認する。


「い、今、会議室に人がいた……」


杏珠は震える手で会議室の窓を指さした。


「え? 誰かが脅かそうとしているんじゃないの?」


メイは呑気に言いながら会議室のドアに手をかけた。


しかし……「あれ、開かない」メイがいくらドアを開けようとしても、そのドアはびくともしないのだ。