今まで真面目に生きて来たつもりだった。


成績も普通だし、生活態度だって悪くない。


少し気が弱いところはあるかもしれないけれど、友達だって普通に作る事ができたんだ。


教室の前まで移動して来て、千夏は深呼吸をした。


中から血の匂いが充満してきていて、顔をしかめる。


先生たちの死体はすでに腐敗が進んできていてるかもしれない。


いくら朝晩が涼しくても、昼間になれば半そででもいいくらい気温が上がってきている。


「開けるよ」


美樹にそう言われて、千夏は大きく頷いた。


ガラッと音を立ってて戸が開いた瞬間、充満していた死体の匂いが体中を包み込んだ。


血の匂いに、腐敗してきた肉の匂い、それに焼死した焦げくささも混ざり、千夏は両手で口と鼻を覆った。


とてもじゃないけれど、普通に呼吸をできる状況じゃなかった。


死体が置かれた教室の中も、まるで戦争中のような有様だ。


「うわぁ、これはひどい臭いだね」


美樹はそう言いながらズカズカと教室に入り、その窓を大きく開いていく。