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そんな美樹はここへ来てから初めて自分が生まれたという感覚に浸っていた。


人が死ぬことが当たり前で、人を殺すのが当たり前になっているこの異様な空間。


みんなはひどく怯えている様子なので、美樹は必死で怯えているフリをしていた。


食堂へ行けば食欲のないフリをして、夜は眠れないフリをする。


決して楽ではないけれど、それでも今の美紀は充実した生活を送ることができていたのだ。


「死体を、移動する?」


美樹がそっと千夏にささやきかけた。


千夏はビクッと肩を震わせて美樹を見る。


美樹はいつものように穏やかな表情を浮かべていた。


「で、でも……」


「悠斗にダメって言われたもんね、やめておこうか」


そう言われて、美樹は俯いた。


校舎内に死体があると言う事は、動物が入り込んでくるかもしれないと言う事。


そうなれば、生きている人間を先に食らう可能性だって十分にある。


「美樹は……どう思う?」


千夏は恐る恐るそう聞いてみた。


美樹は相変わらず穏やかな表情を浮かべている。