だけどそれよりも、友香は気になる事があった。


さっきからグラウンドの入り口辺りにカラスが数羽止まってなにかをついばんでいるのだ。


「あのカラスは何を食べているの? グラウンドに食べ物なんてないよね?」


そう聞いた友香に、心太朗は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


一旦口を開き、そしてまた閉じる。


その様子を見て友香はハッと息を飲んだ。


そういえば、カラスたちが食べるようなものがグラウンドに残っていたかもしれないと、思い当たったのだ。


「まさか……知美……?」


カラスが集まっている場所は最初に知美が死んだ場所だ。


知美はレーザーで体が爆発して死んだ。


いくら死体を片付けても、小さな肉片までは拾い上げる事はできていないはずだ。


「おそらくは」


心太朗はカラスたちから視線をそらせて頷いた。


途端に吐き気が込み上げて来て、友香は慌ててグラウンドの隅へと入った。


トイレまで行く暇もなく、その場に小さく嘔吐した。


ほとんど食べていないから、透明な胃液が出て来ただけだった。


「友香、大丈夫か?」


心太朗がそう声をかけて背中をさする。


友香は何度かえずき、そして大きく深呼吸をしたのだった。