そこに立っていたのは中原杏珠(ナカハラ アンジュ)だ。


杏珠は長い髪をポニーテールにし、赤いリボンを付けている。


その目はキリッと凛々しい釣り目で、女子生徒から見ても美人だった。


そんな杏珠はみゆと仲が良い。


全身から女の子特有の柔らかさを醸し出しているみゆを杏珠が守っているような関係性だった。


お姫様と王子様。


2人の関係を陰でそう呼ぶ生徒も少なくはなかった。


「え、ダメなの?」


美夏が驚いてそう聞いた。


「せっかくみんなで肝試しをしようって言ってるんだから、参加しようよ」


そんな風に言われると、なんだか自分たちが悪い事をしているような気持ちになってしまう。


「だ、だけどさ、肝試しが苦手な子だっているじゃん」


そう言ったのは友香だった。


友香は肝試しをするためにここに来たわけじゃないし、と、自分いいきかせた。


「あ、あたしも苦手」


そう言って手を上げたのは岩谷真子(イワタニ マコ)だった。


背はクラスで一番低く、おかっぱ頭が昭和っぽいとよくからかわれている。


「何よ3人とも、ノリが悪いんだから」


杏珠は呆れたようにため息を吐き出してそう言った。


「まぁまぁ、遊びを無理意地してもかわいそうだし、いいじゃん」


そう言って杏珠の肩を叩いたのは竹内メイだった。


竹内メイもクラス内じゃ美人な方で、誰とでも気兼ねせず話をするタイプの子だった。


杏珠もメイに言われると反論する気がなくなるのか、それからは何も言わかなかったのだった。