範囲指定ゲーム

☆☆☆

グラウンドには相変わらずSOSの文字があり、空には飛行機の姿は見えなかった。


その手前に置かれた太鼓の前に、友香は立っていた。


こんな風に同じ楽器を持って校庭に並ぶなんてことがあるとは、思いもしなかった。


「おい、なにしてるんだ?」


女子たちが騒がしい事に気が付いたのか、男子生徒たちが教室の窓を開けてそう聞いて来た。


見上げると、心太朗の顔があった。


「音楽室にあった太鼓で、大きな音を出してみようと思って」


友香はそう返事をした。


心太朗は目を丸くして、慌てて教室へと引っ込んだ。


下りて来るつもりかもしれない。


「じゃ、やってみようか」


杏珠がそう言い、スピーカーをみんなの真ん中に置き、スイッチを押した。


「とにかく太鼓を叩く。それだけでいいから」


みゆが言い、女子生徒たちは頷いた。


「いくよ? せーのっ!」


みゆの掛け声と同時に、友香たちは太鼓のバチを振った。


バチがなかった子は自分の手の平で太鼓を叩き始めた。


ドンドンという大きな音が幾重も重なって、鼓膜を揺るがす。