「なにか役立つものがあるかもしれないでしょ」


みゆはそう言い、桜の鞄からスマホの充電器を取り出した。


ここは電波が届かないから充電器なんてあっても意味がない。


そうわかっているのに、みゆは自分のスマホの充電を始めた。


「万が一校舎内に電波が届く場所があるかもしれないでしょ」


そういうみゆに、友香は小さく頷いた。


その可能性は極めて低いけれど、ゼロじゃないかもしれない。


そう思い、自分の鞄から充電器を取り出して充電をし始めた。


ここへ来てから使っていなかったから充電は十分にあるけれど、他の子たちも同じように充電を始めた。


「それにこのスピーカーも、まだ使えるよね」


みゆが手に取ったのは桜たちが探してくれたスピーカーだった。


「でもそれじゃ声は届かなかったよね?」


友香が言うと、みゆは首をかしげた。


「これだけじゃとても声は届かないけれど、太鼓の音を響かせることはできるんじゃないの?」


とみゆは言った。


「太鼓の音?」


友香は聞き返し、そして音楽室に当たり前のようにある太鼓を思い出していた。