だが、往々にして、恋とはこういうものだ。

 はなから、お幸せな幻想と妄想で成り立っているうえに、その妄想が妄想を呼んでいく。

 ああ、誰かに話を聞いて欲しい、と遥は思っていた。

 昔、恋愛で長く愚痴っている友だちによく付き合っていたが。

 毎日何時間も同じ話を繰り返していて、疲れないのだろうかな? と疑問に思っていたのだが、いや、今ならよくわかる。

 語りたい。

 誰かにこの想いを語りたい。

 だが、誰に話しても、はいはい、と流されてしまいそうだ。

 そして、恐らく、迷惑極まりない。

 一体、誰に話せば……。

 一瞬、航の母、千佐子の顔が頭に浮かんだ。

 頼りになりそうだからだろう。

 だが、あの気っ風のいい性格だ。

 課長の意思もこちらの意思も構わずに、しのごの言わずにとりあえず、結婚しろ、とか言い出しそうだ。