次の日の朝、起き上がると目から生温い雫が頬を伝った。


涙……?


「……なんで?」


昨日のことがあったから?


夢じゃなかったんだ……。


癌なんて、テレビやドラマの中だけの話だと思ってた。


自分の家族にそんなことが起こるなんて、考えてもみなかった。


だって……癌ってもっと年寄りの人がなる病気でしょ?


どうしてお父さんだったんだろう。


なんで……?


ーーピンポーン


「はーい……」


「るりいますかー?お邪魔します」


もうそんな時間?


階下から響いた声に慌てて時計に目をやると、8時を過ぎたところだった。


お母さん!


なんで起こしてくれないの?


もう!


完全に遅刻だよ。


ーーコンコン


「入るぞ」


「わ、待って!」


そう言い終わらないうちにドアが開いて、見知った顔が現れる。


待ってって言ってるのにー!


「今起きたのかよ?」


呆れ顔であたしを見下ろすのは、隣の家に住む幼なじみの町田 万里(まちだ ばんり)。


「ごめん、急いで準備するから」


「早くしろよな、ったく」