お父さんの前だというのに、涙を堪えきれなかった。


お父さんの方がずっとツラいのに、そんな風に言わせてしまったことが申し訳なくて胸が苦しい。


「る、り……泣く、な。おと、さんは……だい、じょ……ぶだから」


「……っ」


大丈夫じゃない。


大丈夫じゃないじゃん……!


胸とお腹にたまった水のせいで息苦しく、話すことさえ苦痛なはずなのに……どうしてそこまで強くいられるの?


強くいようとするの……?


胸が苦しくて張り裂けそう。


「おとう、さん……っ」


お父さん……っ。


「る、り……」


布団の中からお父さんの手が伸びてきた。


細くなってしまった弱々しい腕が、小さく震えている。


きっと必死に伸ばしているんだと思うと、余計に涙が止まらなくてーー。


あたしは無意識にお父さんの手をギュッと握り返していた。


「……っく、うぅ……っ」


お父さんの手だ。


温かくて大きい……お父さんの手。


その温もりは、昔から変わらない。


大好きだった温もり。


「る、り……こんなに大きく……なったんだな。むか、しは……おと、さんの親指を握る……のに、必死だったのに……」


「うん……っ」


大きくなったよ、お父さん……。


ここまで育って来られたのも、お父さんとお母さんがいてくれたから。


お父さんの優しさに包まれて、ここまで来られた。


ありがとう……。


お父さんの子どもに生まれて来られて、ホントによかった。


ねぇ……お父さん。


もう、頑張らなくていいよ……。


だって、お父さんは十分頑張ったもん。


そんな願いを込めて、ギュッとーー。


ギューッとお父さんの手を握った。