痛みを引かせるための麻薬の量が増え、起きている時間よりも寝ている時間の方が多くなったお父さんは、辻つまの合わないことを言うようになった。


それは麻薬のせいで意識がもうろうとしているせいなんだとか。


「お父さん……ごめんね……っ」


もっとお父さんとの時間を大切にすればよかった。


もっと、もっと……。


一緒にいればよかった。


色んなことを話せばよかった。


あの時、手を差し伸べてあげられたらよかったのに……。


今でもあたしは、それを後悔しています。


意識のないお父さんのそばで、あたしは静かに涙を流した。


何度も指で拭うけど、いつまでも止まらない。


お父さん。


お父さん……。


おとう、さん……っ。


「る、り……?どう、した……?」


突然、お父さんの目がゆっくり開いた。


だけど、焦点が定まらないのかあちこちに視線を彷徨わせている。


もう昔のお父さんの面影はない。


それでも、お父さんはあたしのお父さんだ。


あたしの大好きなーーお父さん。


「なにか、あったのか……?るり……」


「ううん……なにも、ないよ……っ」


「そう……か?ばん、り君に……泣かされたなら……おと、さんに……言いなさ、い。こらしめて……やる」


呂律が回らずになにを言っているのか聞き取りにくいけど、お父さんの声に必死に耳を傾けた。


「大丈夫……大丈夫だよ、お父さん」


こんな時でも、お父さんはあたしの心配をしてくれるの?