「ばん、り……ツラいよ」
お父さんがいなくなる。
そう考えたらたまらなく怖い。
ここ1ヶ月で仕事にも行けなくなり、めまぐるしく悪くなっているのがあたしにもわかった。
さらに痩せてしまい、足や腕は骨と皮だけ。
あばらや肋骨が浮き出て、ひとまわり小さくなったお父さん。
白髪も目立つようになり、1年前とは比べものにならないくらい変わってしまった。
お父さん……。
でもね、お父さんは弱音も吐かずに今も頑張ってるんだ。
いつになったら味がわかるようになるかな。
早く良くなってお酒が飲みたい。
そんなことを笑顔で話している。
こんなに頑張ってるのに、どうにもならないのがたまらなくツラい。
神様はイジワルだね。
どうしてお父さんの頑張りを認めてくれないの?
お父さんを助けてよ……っ!
「大丈夫だ、るりには俺がいる。だから思いっきり泣け」
「ふっ……うぅ……っ」
万里の胸に顔を埋めて思いっきり泣いた。
優しく背中を叩いてくれる手が涙を誘って、いつまでも止まらなかった。
お父さん……っ。
ツラいよ……苦しいよ。
それはね、お父さんのことが大好きだから。
でもうまく話せないし、思ってることも素直に言えない。
手紙に綴った気持ちをお父さんに知られるのは、かなり恥ずかしい。
でも……このままでいいのかな。
渡せないままでいいの……?
後悔しない?
そんなことを考えながら動けないでいるうちに、とうとう動けなくなったお父さんは入院することになった。