それからわずか数日後のことだった。


ポカポカ陽気が心地良い穏やかな5月の春の日。


「肝臓への転移が認められます。抗がん剤に耐性が出来て、今の薬じゃ効かなくなってますね。新しい薬に変えますが、効かずに転移巣がどんどん大きくなれば夏は越せないと思います」


採血の結果、腫瘍マーカーが上がっているのですぐに病院に来て下さいと言われてお母さんと2人でやって来たところ、告げられた衝撃の宣告。


ウソ……でしょ?


夏を越せないなんて……。


だって、仕事にも行ってるんだよ?


ちょっと痩せたけど、あんなに元気なんだよ?


ウソ……だ。


そんなはずない。


お父さんは絶対に大丈夫。


だって……お母さんがそう言ったもん。


お父さんだって……大丈夫だって言ってた。


絶対に治るって……大丈夫だって。


全身の震えが止まらない。


考えたくもないのに、最悪なことが頭に浮かんで消えてくれない。


頭が真っ白になりそうな中、お母さんが泣いていたことだけは鮮明に覚えてる。


診察室を出たあと、動揺する心を落ち着かせようと深呼吸をしてみたけど、まったく無意味だった。