「おじさん、具合いどう?」


万里が心配してくれているのが、すごくよくわかる。


「仕事続けながら、抗がん剤治療を頑張ってるよ」


「そっか」


「……うん」


手術が終わってから3週間ほどで退院したお父さんは、外来で抗がん剤治療をしながら普通に生活している。


抗がん剤の副作用でご飯の味がわからなくなったのと、体がダルい以外は特に何もないらしい。


ひとまず安心だけど、相変わらずお父さんとは以前と変わらない状態が続いている。


今さらなにをどう話せばいいのか、わからなくなってしまった。


「るりもよく頑張ったな」


「あたし……?」


「おじさんがツラい時、支えてただろ?」


「……そんなことないよ」


だってあたしは、何も出来なかった。


お父さんに手を差し伸べることも、声をかけてあげることもなにも。


想いや言葉を、心の中で言うことしか出来なかった。


「いや、るりは頑張ったよ。そばにいてあげるだけでも、おじさんは心強かったと思う」


「そんなこと……」


「ないとか言うのはなしな」


「…………」


でも、だって……。


言えない代わりに唇をキュッと噛んだ。


万里はそんなあたしの頭を撫でながら、優しく笑っている。


あたしの大好きな顔だ。


万里といると、心が安らぐなぁ……。