譲りたくない、キミだけは。



「あ、あの、夏目さん……」

「ん?」

「そういえば、言ってなかったなって思って……」



お弁当を片付ける手を止めて、身体ごと夏目さんの方を向いた。



「わ、わたし……小森、美々子っていいますっ……」



まだ、ちゃんと自己紹介をしていなかったから……。



「……萌え」



も、もえ?



「え、えっと……もえじゃなくて、美々子、です」



わたしの声が小さいせいで聞き間違えてしまったらしく、もう一度。



夏目さんは何故か頭を抱えて、下を向いてしまった。



「あたしとんでもない天然記念物捕まえた気分」

「捕まえたとか怖い言い方すんな」



……?