譲りたくない、キミだけは。



あ、ああっ……どうしよう、夏目さん、イライラしてる……?

わたしなんかと、ペアになっちゃったからっ……。


どうにか夏目さんの機嫌を損ねないように、今日はテキパキと動こう……!


1人意気込んで、シャーペンを握る手に力が入る。


50メートル走……夏目さん、速いっ……!


あっという間に走り終えた夏目さんは、断トツ一番でラインを切り、タイムが告げられた。

7:12……よし、書けた……!



「ねぇ」

「あっ……は、はい!ご、ごめんなさい!」



突然後ろから声をかけられ、ビクッと反応してしまった。

振り向くと、そこには不機嫌そうな夏目さんの姿。