譲りたくない、キミだけは。




「さんとかヨソヨソしいじゃん。呼び捨てでいーよ」



そ、そう言われても……っ。



「え、えっと……レオ、くん」



これがわたしの中の、精一杯。

思い切ってそう呼んでみると、凰牙さん……レ、レオくんは嬉しそうに笑った。



「うん、それいいね。かわいいから許してあげる」



何気なく口にされた『かわいい』だって、わかってる。

彼の言い方は、猫や犬を見て『かわいい』っていうのと、同じだったから。

特に意味はないとわかってはいるけれど……それでも、顔が真っ赤になっちゃうくらい、わたしにとっては衝撃的な言葉だった。



* * *



「明日は始業式で授業はありません。それでは、さようなら。各自気をつけて帰宅するように」