正直穂乃香を置いて先に進むのは気が引けた。

一人で邸の中を見て回るのも怖いし。

ただ、立ち止まっていても何も始まらないのだ。

「穂乃香はどこかに隠れてて! きっと享也がここに来てくれると思うから」

「……分かった。琉衣、気を付けてね」

少しの沈黙の後、穂乃香はそう言って引き戸から離れた。

「絶対生きて帰ろうね!」

引き戸の向こうから穂乃香の姿が消える。

きっとどこか隠れる場所を探しに行ったのだろう。

私も早く出口を見つけて穂乃香と合流しなければ。

廊下に向き直った私は、音をたてないように足を忍ばせて先へ進む。

足元がおぼつかない中、不気味に静まり返った廊下を歩いて行くと、スカートが何かに引っかかった。

「――ッ!?」

後ろを振り返って見て私は飛び上がった。

公園で見たあの少女が、スカートを掴んで立っていたのだ。