行くべき場所は決まった。

享也のために地図も書いたので、もうここに留まる理由もない。

私は地図を見て目的の場所へと歩き出した。

ようやくゆっくりと民家を眺める事ができた私は、あることに気が付く。

どの民家も、人が住めない程に崩壊寸前なのだ。

あの銭湯でさえも、中が綺麗だったのが考えられない程に酷い外観をしている。

何だか狐に化かされたような感じがした。

それともう一つ、あれから一時間は確実に経っているはずだが、未だ真上にある太陽は時間を感じさせない。

そもそも、私がここへ来たときは何時だったのだろうか。

電話での享也の話し振りからすると、ソファで眠ってしまってから大した時間は経っていなさそうだった。

そう考えると、この明るさはおかしい。

やはりこれは夢なのだろうか。