まるでここだけ時間が進んでしまったかのように、玄関の傷みが目立つ。

ふと、ボロボロの靴箱の扉の一つが開いているのに気が付いた。

中に何か入っているようで、銀色の物がキラリと光を反射している。

さっき来たときに鍵がかかっていた場所だ。

足元に気を付けながら近付くと、銀色に光る物の正体が判明した。

鍵だ。

どこの鍵かは判らないが、家の鍵にしては簡素に見える。

どこかの物置か、倉庫の鍵に近い。

持っていても役に立つものなのかは分からないが、とりあえずポケットにしまった。

「そういえば、さっきの……」

番台のある方を覗き見る。

とりあえずあの男の姿はないようだ。

それでも油断はできない。

私は物音を立てないよう、忍び足で銭湯を出た。

きっとすぐにでも享也が助けに来てくれる。

それがいつになるか分からないが、享也ならば絶対に私を探しだしてくれると思う。

ただ一つ気がかりなのは、これからどうしたら良いのかということだ。