「うっ……」

扉を開けて思わず顔をしかめる。

開くと同時に埃っぽい空気が流れ出てきたのだ。

何年も使われていない部屋の臭いがした。

人がいると思ったのは間違いだったのだろうか。

中を覗くと壊れた椅子や座布団などが散らばり、台風でも来たかのようにぐちゃぐちゃに荒れていた。

これは靴がないと中へは入れそうもない。

私は一旦靴を履いてから、ゆっくりと中に忍び込んだ。

靴箱の鍵が無いのが気になったのと、電話を探す為だ。

私にはどうも今の現状が夢の中での出来事だとは信じられない。

番台にそっと近付くと、電話を探した。

あちこちに散らばる紙をどけ、壊れたレジの上に乗せる。

暫くその作業を繰り返していると、黒いダイヤル式の電話が出てきた。

「あった!」