唄が聞こえた。

小さな少女の歌声が。

どこかの民謡だろうか。

私には全く聞き覚えのないメロディだ。

どこか寂しげな少女の歌声は、私の心に染み込むようにして響いた。

不意に唄が止まる。

代わりにか細い声が聞こえてきた。

(……えちゃん)

私は耳を澄ませた。

どこから聞こえるのだろう。

それは先ほど唄を歌っていた少女の声だった。

「あなたは誰?」

私の呼び掛けに答えることなく弱々しい少女の声が響く。

(…げて……早く……から逃げて)