「どうしよう……」

享也は狼狽える私をリビングへ促すと、携帯でどこかに電話を掛け始めた。

多分、相手は御守りをくれたお寺の人だろう。

電話を盗み聞きするのもどうかと思った私は、素直に享也に従ってリビングに入った。

扉の向こうで享也の話し声が僅かに聞こえてくる。

何もできない私は大人しくソファに腰かけると、クッションを抱き締めた。

窓の外を見ると徐々に日が傾いており、もうすぐ夕暮れ時だ。

夏は日が長いはずだが、今日は太陽が落ちるのが早い。

一抹の不安を覚えつつ、享也が来るのを待った。

「……遅い」

ゆっくりと、しかし確実に日は落ちていく。
一から説明しているのか、享也は一向にリビングに現れない。

あまりにも遅いので暇になってきた。

あくびを噛み殺すと、ソファに身を横たえる。

急に襲ってきた睡魔に、私はゆっくりと目を閉じた。

「……琉衣? 琉衣っ!」

バタンッと勢いよく扉が開かれた音がする。

閉じた瞼が重い。

享也が何度も名前を呼ぶ声が、遠い別の場所から聞こえてくる。

夢うつつの中、私はゆっくりと意識を手放した。