「何だったの? それ」

「分からねぇ。ただ、何か危険なものだと思う」

享也は警戒するように辺りを見渡す。

もしかして、穂乃香を拐ったヤツなのだろうか。

「お前さ、体に手形が一杯着いてんだ」

昨日まではなんともなかったのに、と呟くように享也が言った。

享也曰く、微弱ながら霊に取り憑かれ掛かっているようだという。

一気に血の気が引いた。

「昨日やった御守りはまだ持ってるか?」

青ざめる私に享也が尋ねる。

私はポケットから御守りを取り出すと、享也に見せた。

「これ、持ってれば大丈夫?」

藁をも掴むように御守りを握り締め、いつになく真面目な表情の享也に聞く。

返ってきた言葉はあまり良いものでは無かった。

「百パーセント大丈夫だという自信はない。琉衣の話を聞く限りじゃ持って数日か半日か……」

言い難そうに言葉を濁す。

持って半日……。

享也は霊は見えても祓う力はない。

この御守りも、享也がよく行くお寺の知り合いに貰った物だ。