家の駐車場に車が停まった。

享也と妹の玲さんが住んでいる家だ。

「どうしたの?何か、いつもと違う……」

一段落着いたと思った私は、恐る恐る享也に声をかける。

私の言葉にハッとしたような表情を浮かべると、享也は慌てて笑顔を取り繕えて頭をポンポンと撫でてきた。

「心配すんな、大丈夫だ」

何かある、と分かっていても、そんな言葉をかけられたのでは何も言えなくなる。

車から降りると、珍しく享也が手を繋いできた。

やっぱり変だ。

享也は何か私に隠している。

「享也……本当の事言って」

家の鍵を開ける享也にそう言うと、無言で玄関に押し込められた。

「――ちょっと!」

苛立った声でたしなめると、享也は静かにとジェスチャーして覗き穴から外を見る。

「何か居るの?」

小声で尋ねると、享也は首を横に振った。

「居なくなった。さっきまで黒い靄みたいなのが着いてきてたんだが……」

苦虫を噛み潰したような顔をして享也が答える。

黒い、靄……。

私にはさっぱり見えていなかったのを考えると、霊的な何かだろうか。