穂乃香が行方不明になっているからか、一時間目の授業は自習になった。

多分職員室で会議でもしているのだろう。

教室は、いつもとは違うざわめきで支配されていた。

私はどうしたら良いかと頭を抱える。

何度か穂乃香に電話をするも、一向に繋がる気配はない。

「琉衣」

名を呼ばれて顔を上げると、三森が立っていた。

「どうしたの?」

私の問いには答えず、空いた隣の席に腰かける。

「琉衣も電話してるの?繋がった?」

開いた携帯を見て、三森も携帯を開いた。

彼女も穂乃香に電話をかける気らしい。

「全然駄目。電源切ってるみたいじゃないし、もしかして本当に誘拐されたのかなぁ……」

確率としては、そっちの方が高いし、何より携帯が繋がる状況にあるのだ。

落としたなどの理由があれば話は違ってくる。

それでも神隠しだなんて根拠のないものに比べれば、誘拐というのが現実的だ。