「この度は月ヶ瀬旅館をご利用くださいまして誠にありがとうございました。ぜひまた、いらしてください。従業員一同、心よりお待ちしております」 旅館を後にするお客様の後ろ姿を見送り、ふぅっと息を吐き出した。 (なんとか午前中は乗り切れたな) 「では織様は、昼食をお取りになってください。お部屋までお持ち致します」 「はーい」 (やっと少し落ち着いたな…) ほっとひと息ついて、自分の部屋へと向かった。