「本日は15:00よりお客様が続々とチェックインにいらっしゃいますから、それまでに各客室の確認と、夕食のメニューの決定をお願いします。それから、ロビーに飾る生花のご用意もです。17:00には団体のお客様がみえますので、お出迎え後、大広間にご案内してご挨拶を。その他の細かい動きについては、適時指示をさせて頂きますので」


そう言って樹は今日の宿泊者名簿を差し出してきた。


今日は土曜日なので宿泊者も多く、しかも団体のお客様もみえる。


「はぁ…」


ママがいなくなって初めての週末の忙しさに、思わずため息がこぼれる。


(でもやるしかない。今、この旅館の女将は私なんだから)


名簿を片手に、気合を入れ直す。


(午前中は、客室の確認だな)


現在は朝8:00。何時までに客室の準備が終わるかと考えながら歩き出す。


(11:00のチェックアウトには間に合うよね)


自分で納得し、名簿でお客様の特徴を確認しながら、客室管理を担当している千歳の元へ向かった。