「え、待って、これどういうこと…?」
パパとママが去ってからしばらくしても、私はまだ状況を飲み込めずにいた。
「ですから、先程から何度も申し上げましたでしょう。旦那様と奥様はアメリカへ行かれたのですから、この旅館の責任者はあなたとなったのです」
はぁ、と呆れたようなため息をつきながら、樹がもう1度説明してくれる。
「織様には少しずつ女将の仕事を覚えて頂きます。私どもがサポートしますから」
「そうそう、あんまり心配しなくても大丈夫だよ、織姫」
(なんで葵はそんなに気楽そうなのよ…)
これからは自分が旅館を背負っていかなければならないという事実に不安になり、肩を落とす。
