部屋に着き荷物を置いたところで、ドアをノックする音が聞こえた。
「はーい。どうぞー」
「失礼いたします」
そう言って入ってきたのは、予想通り千歳だった。
「じゃあ千歳、お願いね」
「かしこまりました」
学校が終わり、旅館の若女将として働くときはいつも着物を着ることになっているのだが、私はまだ自分では着られないため、いつも千歳に着付けをお願いしている。
千歳は慣れた手つきで帯を結んでいる。
(いつものことだけど、本当に着付け早いな…。しかも綺麗だし)
そんなことを考えている間に、
「織様、できましたよ」
もう着替え終わっていた。
「ありがとう、千歳」