美術館巡りというのも、意外に体力のいるものだ。

大英博物館やルーブル美術館は桁違いだけど、そうでなくても、ヨーロッパの美術館や博物館はとにかく広い。

どんなに小さな所でも、じっくり絵を堪能していれば、時間は一時間、二時間と、あっと言う間に過ぎてしまう。

日本にも、美術館や博物館はたくさんあるけど、これほど興味を持って観たことはなかった。

でも、これが、驚くほど面白く楽しいのだと、最近気付いたんだ。





歩き疲れた私を見かねたのか、休憩しようとカフェに入った。

アキも私も、ホットコーヒーを頼む。

ここも、夏だと言うのに、結構涼しい。

日本のうだるような暑さに比べれば、何倍もいいのだけれども。



オープンカフェのテラスで、アキは通りを行く人々の姿を静かに眺めている。

なんだか、私が隣にいてはいけないような、そうな雰囲気を醸し出していて、私は声を掛けられないでいた。

するとアキは、心配そうな目で私の方へ顔を向けて言った。


「まだ具合悪いのか?」


あの瞳に見つめられると、どうもドキドキしてしまう。

それに、私が一人でヤキモキしていたことを悟られまいと、無理矢理笑顔を作り「大丈夫」と答えてみせた。

アキは「そう」と言ってコーヒーをすすり、また通りへと視線を戻した。



なんだ、ちゃんと私と一緒だって、覚えてくれてるんだ。

当たり前のことだけど、ちょっと嬉しい。

そんな小さなことにドキドキしてる自分に戸惑いながらも、私の興味はどんどんアキへと向けられていったんだ。